創作小説の新着ブログ記事
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保(やす)来(き)信(しん)次(じ)郎(ろう)が久しぶりに旅館に戻る。 「和ちゃん、色々あって大変だったね」 「うん、大丈夫。先週、父が亡くなったってメールがあったの」 「それは何と言って良いか・・・。折角会えたのに、悔やまれるね」 「いいの。でも、やはり生きている内に父に会えて良かったと思う。... 続きをみる
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恋の季節 保来探偵事務所は今日も平穏安泰だ。もっとも、仕事が来ないのだから波風が立つわけが無い。 もはやこの会社は、税金対策の為に存在していると言っても過言では無い。 そんな中、アパート経営は順調だった。 暇な癖に、1階の事務所タイプの部屋を陣取っていた事務所。それがん2階のワンルームへ... 続きをみる
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健一は、当時を回想するように弱い声で話す。 「俺が気が短く短気だっただけに、敏子達に迷惑を掛けてしまった。申し訳なく思っている」 和枝は何も言えなくなった。彼女のイメージしていた父親と違っていたからだ。 (若しかしたら、私があなたの子供だと気付いているのでは?) そう思えてくる。 その時、... 続きをみる
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父親だという男の名前は鈴木健一。健一と和枝の母・敏子は、同じ旅館で働いていた時に深い関係になった。 妊娠したのを知り、敏子が健一に伝えようとした直前、調理人だった健一が料理長と刃物沙汰となり、彼はその日のうちに姿をくらましてしまった。 料理長に深手を負わせただけに逃げるのに一生懸命で、彼は敏... 続きをみる
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ホラ探偵のらりくらり日記Ⅲ 実父 保来孝太郎、平原幸恵コンピも北海道の牧場に戻った。 再び、アパート3階の信次郎の家は静かになった。何だかんだと言っても、誰も居なくなると寂しい。 父・孝太郎は置き土産に、「ほら探偵信次郎」の名刺を知人などに置いて来たと言った。 とは言え、調査依頼なんてそ... 続きをみる
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保来孝太郎は、書類などを入れる大きな茶色の封筒、保存袋を木村和枝に渡す。 「その中に、和ちゃんのお父さんの調査結果が入っている。住所も、家族構成も。そして、今入院している病院も記述してある。残念ながら、直接会っていないので写真は得られなかった。目を通すのも嫌なら、捨てるなり燃やすなりしなさい」 ... 続きをみる
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父・孝太郎が戻ってから数日経った。 「わし等、旅館の方に行くから」 孝太郎は信次郎に突然告げる。信次郎は、いよいよ決着しに行くのかと胸が騒ぐ。 孝太郎と幸恵が実家の旅館に着くと、真っ先に娘の彩音が出迎えた。木村和枝も現れる。 いよいよ波乱が始まる。二人は和枝に案内され、女将・ユキの待つ部屋... 続きをみる
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秘密の調査 「今日は、父さん一人で調査なの?」 調査は、殆ど孝太郎と幸恵のペアで行っていた。息がピッタリで仕事が捗(はかど)るのか、二人は常に一緒に動いていた。 「何か大切な調査をしているらしく、私にも内容が分からないのよ。調査が完了するまで2~3日泊まってくるって」 信次郎は、父の調査に興... 続きをみる
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父の孝太郎は上京間もなく、既に色々動いていた。幸恵の東京見物と説明していたが、実は一緒に何かを調査していた。 そんな父の行動を、保来は不思議に思う。 「父さん、一体何を調査してるんだ? まさか、「繭の館事件」の桜谷貴子を調査しているのか?」 「まあな」 「あの人と直接会ったけど、もういい歳だよ... 続きをみる
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信次郎は将来に不安を覚えた。木村和枝の居ない探偵社なんて有り得ない。 信次郎の心を見透かす様に、孝太郎が言う。 「お前が探偵業を遣らない積りなら、あの事務所を引き払え。誰かに貸した方が遙に儲かる」 「俺に、探偵業を辞めろと言うのか?」 信次郎が反発する。 「辞めたければ辞めれば良いが、俺は辞... 続きをみる
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一ヶ月ほど経過する。 「信ちゃん。私、旅館の方に帰る事になったから」 木村和枝が信次郎に伝える。 和枝は一ヶ月か二ヶ月おきに旅館に行っていた。アパートの管理状況とか、殆ど収入は無いが、保来探偵社の状況報告も兼ねて。 それは、旅館の女将であるユキの命令とも言うべき指示だった。 ルーティーン... 続きをみる
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新たなコンビ 信次郎は、二人を自分たちが住んでいる3階の部屋に連れて行く。 「おお、外から見たよりも広く感じるな。部屋は幾つあるんだ?」 「5部屋。リビングに水回り。トイレは2カ所。お客さんも泊まれるようにしてある」 「ユキの指図か?」 「母さんや、東京見物したいという仲居さん達が何時でも泊ま... 続きをみる
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今まで、信次郎に和枝との結婚をせっつく人は何人も居た。両親もそうだし、探偵業で知り合った岩田も安藤絵美子もそうだった。 口汚い刑事の浅羽は、 「和枝さんを生殺しにするのか」 とまで言い放った。だから、信次郎は浅羽を毛嫌いしている。 最近では、妹の彩音にまで、 「和枝さんは兄さんを待ってるの... 続きをみる
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保来家は山間から離れた中核都市に別宅を持っていた。その家に、ユキに女将の座を譲って引退した祖母が一人で暮らしていた。 やはり街の方が買い物も病院に行くのも便利だからである。 保来信次郎は、進学するに当たってその街にある高校を選んだ。高校生活は祖母と一緒に始まった。 若者が遊ぶ物など無かった... 続きをみる
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わだかまり 信次郎は一人自宅で退屈な日々を過ごす。案の定、探偵社は閉めてる。 《只今遠地に調査作業に出向いていますので、暫くの間、保来探偵社事務所を閉めさせて頂きます》 そんなような内容を、留守番メッセージに残す。 「この際だ、海外旅行にでも行ってこようかな」 そう思ったが、旅慣れない海外... 続きをみる
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普段の信次郎なら、部屋に入るなりドカッと座り胡座を掻くのだが、今回は母・ユキと彩音との対面がどんな展開になるのか心配で、座る気になれず立ち尽くしたままだった。 そう、いざとなったら彩音と共に部屋から逃げ去る準備をしていたのだ。 「貴方のお父さん、元気なの?」 ユキの夫である孝太郎を、貴方のお... 続きをみる
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保来信次郎は、ハンドルを握りながらも、彩音と母・ユキの顔合わせを心配して気持ちが落ち着かない。 「彩音が母さんに酷い目に遭わなかったとしても、親父の件はどうするんだ。彩音に説明させるのか?」 「そうね。どうなのかしら?」 「オイオイ。無責任だぞ、和ちゃん」 「そうなったら、信ちゃんの得意の話術で... 続きをみる
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初対面 保来探偵事務所は今日も暇である。本当にいつも暇なのである。平原彩音もこの状況にもう慣れた。 「丸畑さんの調査は、彩音も頑張ったらしいじゃないか」 母親の違う妹と分かってからは、信次郎は彩音の名を呼び捨てにしている。 「和ちゃんが褒めてたぞ。演技力が良いって。結実子さんの写真まで撮った... 続きをみる
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保来信次郎は、調査報告書を丸畑に渡さず、おもむろにページをめくる。 「結実子さんは、埼玉の地方都市で建築業をしている人と結婚しています」 「そいつは、いや、その人は歌手の卵だったと言う奴じゃないだろうね」 丸畑は、保来の話をぶった切って入って来た。 「先ず、違うでしょ。旦那という人は当時、建築... 続きをみる
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10時を回った頃、和枝はフロントに向かった。 「女将さんに伺いたいことがあるのですけど、お時間頂ければ有り難いのですが」 年老いた受付の男性は、女将を呼びに行ってくれた。 「どんなご用でしょうか?」 50代くらいの女性だ。 「こちらに、由井結実子さんと仰る女性が居ると聞いて伺ったのですか?」... 続きをみる
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帰りもまた、渋滞に嵌まった。ノロノロ運転していると後ろの車がクラクションを鳴らして来た。ルームバックミラーで確認するも、一度は無視する。しかし、何度も鳴らすので、顔を出し後方に目を向ける。 すると、後車の運転手が腕を出し、彼の車のタイヤを指差している。 砂利を引き詰められた畦道に嵌まり動けな... 続きをみる
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恋慕の果てに ここまで聞いた保来信次郎は、丸畑の最初に語った内容とは随分違うと思う。これは、大恋愛でなく、大片思いだ。それも、保来の感じる所では、由井結実子なる女性は丸畑を、殆ど眼中に置いてない雰囲気だ。 第二候補、第三候補であろうと、そんな男達に多少なりとも好意を持っているのなら、 「大好... 続きをみる
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【いやー、昨夜は下書き段階で終わりにしてしまった。頭の中はてっきり正式投稿したものと思っていたが、なんだろう。年の所為か?】 社会人となった丸畑は中堅クラスの会社に入る。その会社は支店が沢山あり、その支店の一つで営業業務に就く。 事務志望だったが、新人教育の一環として、営業を遣らされる。その支... 続きをみる
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宮下は、刑事という仕事が邪魔してか、なかなか彼女が出来なかった。いま、偶然にも彩音と知り合った。そして、彼は彩音に一目惚れのような感情を持つ。 また彩音も、上京してこの方、同年代の若者と触れ合う機会が無かった。彩音もまた、誠実そうな宮下に親しみを抱く。 とは言え、警察と利害関係が微妙に重なる... 続きをみる
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恋? 相変わらず暇な保来探偵社。そこに一人の青年が訪れた。 「保来社長は居ますか?」 結構軽い雰囲気で事務所に入って来た。 「今、用があって席を離れていますが」 平河美咲が応対する。 「また、何時ものサボりですか」 随分と馴れ馴れしい砕けた言い方だ。 「保来に、どんなご用件で?」 彩音が、... 続きをみる
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実のところ、木村和枝が結婚したかどうかは微妙で、事実かどうかも分からない。和枝を知る多くの人達は、彼女が信次郎の見合い話を聞き、自ら身を引いたのではないかと見ていた。 当時、孝太郎を手伝って保来興信所の仕事を支えていた彼女が、唐突に「結婚するので」と一言残し辞めて去ったのは、信次郎や彼の母・ユ... 続きをみる
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降って湧いた妹 この様な内容を話し終えるのに5時間ぐらい要した。何故か? 彩音の話があちこち飛びまくるからだ。 同級生の誰々ちゃんは性格が悪いとか、集配に来る運転手は小屋の後ろで何時もオシッコしていくだとか、家畜との出来事とか、本筋から外れる話が余りに多い。 保来信次郎は、そんな彩音に... 続きをみる
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彩音は高校を卒業して少しの間、牧場の仕事を手伝っていた。19歳に成る迄は牧場の仕事を手伝うと、母・幸恵と約束したからだ。 幸恵自身もやはり、両親から20歳になるまで東京行きを許されなかった。 もう一つ、牧場の仕事を覚えさせたなら、上京して何かあったら、その仕事を懐かしく思うかも知れないとの含... 続きをみる
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娘の彩音が父・孝太郎を待ち構える。 「どうだったの?」 「どうだったって聞かれてもな。確かに、週刊誌に載ったのは息子の信次郎だったよ」 「それで、会って何話して来たの? 何か言われた?」 彩音にしてみれば、二十年間弱も音沙汰無しの父親が突然現れたのだから、特別な会話が有ったのではと思うのだ。 ... 続きをみる
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白髪の混ざった口髭と顎髭。目には老眼鏡。深く被ったハンチング帽子からはグレーの髪の毛が覗く。保来孝太郎である。 その風貌は、彼が失踪した時とは大きく変わっていた。彼を一目で孝太郎と見抜く者は、恐らく誰一人居なかったであろう。信次郎やその家族さえもである。 孝太郎も、自分であると見抜かれぬよう... 続きをみる
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この幽霊屋敷は埼玉県の或る町にある。東京では無いが、彼女達にとってはそこは大都市圏内なので、東京と称しても大きな抵抗は無い。 東京ディズニーランは、実際は浦安にあるが、冠に東京と付いていても文句を言う人は殆ど居ないのと同じだ。 平河彩音も、誰かが持参した記事の乗っているその週刊誌を読んだ。彩... 続きをみる
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PCの中の二人 或る日、浅羽刑事から電話が掛かって来た。彼とは、職業上で幾度か関わっているので当然顔見知りではある。ただ、仕事とは関係なく木村和枝に言い寄る浅羽を、保来は毛嫌いしていた。 「至急、動いて欲しいんだけど、あんたなら何時でもオーケーだろう」 失礼な物言いである。まるで保来信次郎... 続きをみる