2022年3月のブログ記事
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保(やす)来(き)信(しん)次(じ)郎(ろう)が久しぶりに旅館に戻る。 「和ちゃん、色々あって大変だったね」 「うん、大丈夫。先週、父が亡くなったってメールがあったの」 「それは何と言って良いか・・・。折角会えたのに、悔やまれるね」 「いいの。でも、やはり生きている内に父に会えて良かったと思う。... 続きをみる
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恋の季節 保来探偵事務所は今日も平穏安泰だ。もっとも、仕事が来ないのだから波風が立つわけが無い。 もはやこの会社は、税金対策の為に存在していると言っても過言では無い。 そんな中、アパート経営は順調だった。 暇な癖に、1階の事務所タイプの部屋を陣取っていた事務所。それがん2階のワンルームへ... 続きをみる
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健一は、当時を回想するように弱い声で話す。 「俺が気が短く短気だっただけに、敏子達に迷惑を掛けてしまった。申し訳なく思っている」 和枝は何も言えなくなった。彼女のイメージしていた父親と違っていたからだ。 (若しかしたら、私があなたの子供だと気付いているのでは?) そう思えてくる。 その時、... 続きをみる
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父親だという男の名前は鈴木健一。健一と和枝の母・敏子は、同じ旅館で働いていた時に深い関係になった。 妊娠したのを知り、敏子が健一に伝えようとした直前、調理人だった健一が料理長と刃物沙汰となり、彼はその日のうちに姿をくらましてしまった。 料理長に深手を負わせただけに逃げるのに一生懸命で、彼は敏... 続きをみる
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ホラ探偵のらりくらり日記Ⅲ 実父 保来孝太郎、平原幸恵コンピも北海道の牧場に戻った。 再び、アパート3階の信次郎の家は静かになった。何だかんだと言っても、誰も居なくなると寂しい。 父・孝太郎は置き土産に、「ほら探偵信次郎」の名刺を知人などに置いて来たと言った。 とは言え、調査依頼なんてそ... 続きをみる
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保来孝太郎は、書類などを入れる大きな茶色の封筒、保存袋を木村和枝に渡す。 「その中に、和ちゃんのお父さんの調査結果が入っている。住所も、家族構成も。そして、今入院している病院も記述してある。残念ながら、直接会っていないので写真は得られなかった。目を通すのも嫌なら、捨てるなり燃やすなりしなさい」 ... 続きをみる
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父・孝太郎が戻ってから数日経った。 「わし等、旅館の方に行くから」 孝太郎は信次郎に突然告げる。信次郎は、いよいよ決着しに行くのかと胸が騒ぐ。 孝太郎と幸恵が実家の旅館に着くと、真っ先に娘の彩音が出迎えた。木村和枝も現れる。 いよいよ波乱が始まる。二人は和枝に案内され、女将・ユキの待つ部屋... 続きをみる
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秘密の調査 「今日は、父さん一人で調査なの?」 調査は、殆ど孝太郎と幸恵のペアで行っていた。息がピッタリで仕事が捗(はかど)るのか、二人は常に一緒に動いていた。 「何か大切な調査をしているらしく、私にも内容が分からないのよ。調査が完了するまで2~3日泊まってくるって」 信次郎は、父の調査に興... 続きをみる
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父の孝太郎は上京間もなく、既に色々動いていた。幸恵の東京見物と説明していたが、実は一緒に何かを調査していた。 そんな父の行動を、保来は不思議に思う。 「父さん、一体何を調査してるんだ? まさか、「繭の館事件」の桜谷貴子を調査しているのか?」 「まあな」 「あの人と直接会ったけど、もういい歳だよ... 続きをみる
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信次郎は将来に不安を覚えた。木村和枝の居ない探偵社なんて有り得ない。 信次郎の心を見透かす様に、孝太郎が言う。 「お前が探偵業を遣らない積りなら、あの事務所を引き払え。誰かに貸した方が遙に儲かる」 「俺に、探偵業を辞めろと言うのか?」 信次郎が反発する。 「辞めたければ辞めれば良いが、俺は辞... 続きをみる
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一ヶ月ほど経過する。 「信ちゃん。私、旅館の方に帰る事になったから」 木村和枝が信次郎に伝える。 和枝は一ヶ月か二ヶ月おきに旅館に行っていた。アパートの管理状況とか、殆ど収入は無いが、保来探偵社の状況報告も兼ねて。 それは、旅館の女将であるユキの命令とも言うべき指示だった。 ルーティーン... 続きをみる
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新たなコンビ 信次郎は、二人を自分たちが住んでいる3階の部屋に連れて行く。 「おお、外から見たよりも広く感じるな。部屋は幾つあるんだ?」 「5部屋。リビングに水回り。トイレは2カ所。お客さんも泊まれるようにしてある」 「ユキの指図か?」 「母さんや、東京見物したいという仲居さん達が何時でも泊ま... 続きをみる
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今まで、信次郎に和枝との結婚をせっつく人は何人も居た。両親もそうだし、探偵業で知り合った岩田も安藤絵美子もそうだった。 口汚い刑事の浅羽は、 「和枝さんを生殺しにするのか」 とまで言い放った。だから、信次郎は浅羽を毛嫌いしている。 最近では、妹の彩音にまで、 「和枝さんは兄さんを待ってるの... 続きをみる