創作小説

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ほら探日記Ⅱー27 恋? 1

恋?


 相変わらず暇な保来探偵社。そこに一人の青年が訪れた。
「保来社長は居ますか?」
結構軽い雰囲気で事務所に入って来た。
「今、用があって席を離れていますが」
 平河美咲が応対する。


「また、何時ものサボりですか」
 随分と馴れ馴れしい砕けた言い方だ。
「保来に、どんなご用件で?」
 彩音が、ムッとした表情で入り口へと進む。
「僕は宮下と言います。保来さんとは顔見知りの者です。えーと、貴方は最近入られた事務員さん?」
 来客は、新米刑事の宮下だった。


「そうですが。お急ぎでしたら直ぐ呼び出しますが?」
「いや、急ぎの用件では無いので・・・」
「多分今頃、上で昼食の支度をしているんだと思います。もう間もなく降りてくる筈です」
 彩音は、時計を見ながら答える。
「今日は非番で休みなので時間はあります。待たして貰って良いかな?」
 どうぞと言いながら、彩音は来訪者用の場所に案内する。


 宮下をソファーに案内すると彩音はコンパクトキッチンに向かう。
「それにしても、新人を雇うなんて」
 宮下が呟く。呟き終わって彼はハッとする。
「私、お茶くみ専用で採用されたんです。お茶にしますか? それともコーヒーが良いですか? 冷たい水も有りますよ」
 彩音の言い方が冷たくなっている。


「ここは、何時も暇みたいなので人を雇う程仕事があるのかと思って、つい出ちゃって。ゴメン。不味かったかな?」
「暇なのは当たっています。私の場合は特殊なので」
「そうなんだ。何で此処に来たの? 出身は何処?」
 職業柄なのか、宮下はまるで職質するように次々と質問し始める。


 宮下は、彩音と郷里が近いと知ると共通する話題へと会話を持って行く。だが、問い詰めるような質問の癖はどうしても出てしまう。
 そうなのだが、彩音は次第に不快に感じなくなって来る。
 どうやら、二人はお互いに好印象を抱いたようだ。


 保来信次郎が三階の自宅から事務所に下りて来た 両手に荷物を提げている。
「彩音。昼飯作って来たぞ」
 保来は曲がりなりにも旅館の息子。一生懸命では無かったが、それなりに旅館の仕事はマスターしている。当然、調理も出来る。


「彩音・・・さん? えっ、若しかして貴方は社長の親戚?」
 さすが刑事。読みが鋭い。
「ええ、まあ」
 彩音は立ち上がって料理を受け取りに行く。
「お客さんか?」
「うん。宮下さんという人」
「宮下? あの浅羽の野郎の腰巾着か?」
「良く分かんないけど、宮下さん」


 すると、
「聞こえてますよ。腰巾着は無いでしょ。それに、浅羽先輩は立派な警部。少なくとも私の前で先輩を呼び捨てにしないで下さい」
「おう。それでどうした? 俺にまた事件の依頼に来たのか? 顧問になって欲しいのか?」
「そんなのじゃありません。そうだとしても、保来さんにはお願いしません」
「ハッキリ言うな。ぞれじゃあ、何しに来た?」
「遅くなりましたけど、この間の、プライベートでお願いした件のお礼です」


「おお、季嶋さんだったっけ? かなり落ち込んでいたけど、少しは元気になったのか?」 
「引っ越してしまったので疎遠になったようだけど、季嶋さんが引っ越しする時に母が会って、季嶋さん、明るくなっていたそうです。季嶋さん、保来さんに大変お世話になったと感謝していたそうです」
「辛い思いをしている人に、自分が出来ることをして上げただけだけどな」
 得意の格好を付ける信次郎。


 自ら命を絶った夫の後事を手伝った保来信次郎。その時、整理が付いたら病に伏せている母の元に引っ越しすると語っていた季嶋の妻。
 寂しさ辛さを胸の奥に仕舞って残りの人生を生き抜いて欲しいと保来は願う。
「所で、こちらの彩音さんと保来さんとは、どういう親戚関係なんですか?」
「俺の妹だ。文句有るか?」
 その言葉に、宮下は一瞬驚いた表情を見せる。


「それにしては、歳が大分離れているみたいだけど?」
「年取って子供作っちゃいけないのか?」
「そんなこと言って無いでしょ。私は浅羽先輩ではありません。そう、突っかからないでくださいよ」
「分かった。所で、俺が作ったメシ、食っていくか?」
「ええ、ご馳走になりますと言いたいけど、余分になんか作ってないでしょ?」


「いいや。和枝君が何時帰って来ても食べられるように、常に多めに拵(こしら)えている。彼女は、今日は遅くなると言っていた。帰って来たらまた作れば良い」
「そうですか。それでは、遠慮無くご馳走になります」
 宮下は、昼飯よりも彩音ともう少し話がしたかったのだ。


出会い系を信用するな。 [Explicit]
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Hentai Gorizal Records
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