創作小説

小説を主に掲載していきます。

2022年4月のブログ記事

  • 回り道 その19

     拓海を送り出すと、智子は早速大介に連絡する。大介は仕事中。電話としては掛けられない。  智子は、Cメールで連絡を取る。 【拓海君が菜実さんに妊娠させた。どうしよう】  未だ確定では無いのに、衝撃的な内容である。  LINEでも良いのだが、そのLINEには結菜と大介しか登録していない。拓海には断ら... 続きをみる

  • 回り道 その18

     根草大介と沢登智子はもんじゃ焼き店に入る。 「食事に連れてってくれると言うからどんな食べ物屋に行くのかと思ったら、これなのね」  智子はもんじゃを頬張りながら言う。 「色々な食べ物を食べた方が良いんじゃ無いかって思ってね」 「う~ん? さては、結菜が大ちゃんに何か告げ口したな」 「告げ口なんて結... 続きをみる

  • 回り道 その17

     学校側が手を拱いているはずも無く、先生が拓海の父親に直接電話する。父・大介は帰宅すると烈火の如く彼を叱った。 だが、強く怒鳴りつけたのはこの時だけだった。  大介は父親なりに、自分が拓海の母親を追い出した事で、拓海に寂しい思いをさせた。その思いがあったので、あまり強硬な態度を続けられなかった。 ... 続きをみる

  • 回り道 その16

     青春  河(かわ)里(さと)菜(な)実(み)が根草家に訪れる一ヶ月ほど前。その頃、拓海と菜実は行動を共にすることが多かった。  バイト先が一緒と言う事も関係した。 「ねえ、明日私の所に来ない? 土曜だし、バイトも学校も休みだし」 「えっ、菜実さんの部屋に?」 「一緒にゲーム遣ろう。ゲーム好きでし... 続きをみる

  • 回り道 その15

     ベランダに立ち洗濯物を触りながら、智子の頭は忙しく回転する。 菜実の人物評価。二人の仲はどうなっているのか。今後どう応対すべきか。勝ち気ではあるが、その一方で世話好きでもある智子は、一人悩む。  ベランダで、天気のハッキリしない蒸し暑さの中、一人佇む智子。 「そうだ」  彼女はうっかりしていたこ... 続きをみる

  • 回り道 その14

     ドカドカと拓海がキッチンに現れた。 「連れて来たよ」 「良く来てくれたわね」  智子はご飯の盛り付けをしながら応え、後ろを振り返り、キッチン入り口に視線を向けた。  智子は、思わずご飯茶碗を落としそうになった。 「えっ! 女の子なの?」  拓海の後ろに隠れるようにして立っていたのは、紛れもなく女... 続きをみる

  • 回り道 その13

     結菜は話を続ける。 「私、この前、お母さんが付けているノートを見たの。そこには、細(こま)々(ごま)と料理に関して書いてあった。味については勿論、行った先の店のメニューとか店内の様子とか。スーパーの惣菜に付いてまで書いているのよ。それで、結菜がお母さんに聞いたの。そしたら、何れお店を持てたら良い... 続きをみる

  • 回り道 その12

     何はともあれ、根草家の共同生活は順調に船出する。それもこれも沢登智子のお陰と大介は奉る。  そして、その感謝の気持ちを示そうと、根草大介は彼女を食事に誘う。料理の得意な智子を招待するのだから、生半可な店では折り合いが付かない。  大介は、奮発して高給料理店に智子を連れて行く。  智子は、出される... 続きをみる

  • 回り道 その11

     船出  午後一時頃、拓海が昼食を食べにキッチンに2階の部屋から降りて来た。いつものサイクルだ。  智子は、既に料理をテーブルに並べている。 「あのさ、俺、来週からアルバイトするから」  食事をしながら拓海が言う。 「あら、そうなの。良い事じゃない。どういう所で働くの?」 「トンカツ屋」 「トンカ... 続きをみる

  • 回り道 その10

     拓海は学校に通うために毎日4時頃家を出る。智子は、軽い食事を用意する。大概パン食に合わせた一品を出すだけではあるが。  夕食というか夜食は学校でも食べられる。  平日はこの様な感じで過ぎて行く。拓海にとって顔を余り見たくない大介や結菜とはすれ違いの毎日。実に順調に同居生活は進む。  拓海は次第に... 続きをみる

  • 回り道 その9

     沢登智子は、大介の息子・拓海を部屋から出すことに成功した。最も、部屋に閉じ籠もっていたのは大介や智子が居た時だけ。  智子が来る前は、大介が会社に行った後、拓海は伸び伸びと過ごしていた。  入浴やシャワー浴びも自由勝手に出来るし、外出もしていた。  智子が成功したと言えるのは、家族とか身近な人の... 続きをみる