創作小説

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ほら探日記22 PCの中の二人 その1


  PCの中の二人


 或る日、浅羽刑事から電話が掛かって来た。彼とは、職業上で幾度か関わっているので当然顔見知りではある。ただ、仕事とは関係なく木村和枝に言い寄る浅羽を、保来は毛嫌いしていた。


「至急、動いて欲しいんだけど、あんたなら何時でもオーケーだろう」
 失礼な物言いである。まるで保来信次郎は何時でも暇で仕事が無いと思っているようだ。事実ではあるのだが。
「俺は今、忙しい。まぁ、内容に依っては他の仕事をずらして遣ってもいいけど」
 今まで、浅羽から緊急案件など来た事が無かったので、保来は少々興味を抱く。  
「そうか、頼めるか。この礼は和枝さんに返しとくから」
 彼は、何時も何か一言、保来をムカつかせる言葉を言う。


 浅羽は電話口で、掻摘(かいつ)まんで説明を始めた。
 浅羽刑事とコンビを組んでいるのが新米の宮下である。その、宮下の母親が近所付き合いをしていると言う季嶋満子に相談事を受けた。


 彼女が言うには、ご主人との連絡が突然取れなくなり大変心配しているとの事。勤務先に電話をしたら、ご主人は既に退社したと伝えられた。
 夫婦は一年前ぐらいに息子を亡くしている。そのこともあり、気落ちした単身赴任の夫とはマメに連絡を取っていた。連絡が途絶えたことに心配であり、胸騒ぎがする。


 そこで、地元の警察に「様子を見に行って」と頼みたいのだが、直接管轄の警察に連絡しても取り合って貰えるか分からないので、先ずは宮下の母親に相談したと言う。
 彼女はペーパードライバーであり、車はご主人が使用しているので自分の近くには無い。交通機関を利用して行く方法は知っているが、母親の看病など色々と雑用があり、直ぐに動けない。警察官である宮下なら何とかして貰えるのでは無いかとの切羽詰まった内容だった。


 警察関係者だからといって、明確な理由も無しに管轄外の警察を動かせない。そこで浅羽は、顔見知りの保来探偵に電話したのである。
「自殺する可能性があると言う訳だな。若しかしたら、もう手遅れかも知れないよ」
「そうかも知れないが、とにかく様子を見て来て欲しい」
 保来は、浅羽の緊急要請を引き受けた。


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